2021年12月3日(金)、長門市役所4階 会議室にて、第4回目となる「長門湯本温泉みらい振興評価委員会」が開催されました。
これは、外部の専門家等が長門湯本温泉の観光まちづくりを検証し、その知見をまちの未来に生かすために、長門市長門湯本温泉みらい振興基金条例に基づき、年に2回開催されるものです。
※この会議は原則公開となっており、会議の模様は下記のyoutubeにて全編が公開されています。
全編(約2時間20分)
各委員及び参加者は次の通り。
※星野委員は欠席となりましたが、星野リゾート 界 長門 三保支配人により、「審議事項について」の意見が代読されました。
長門湯本温泉みらい振興評価委員会 | ||
氏名 | 分野 | 出欠 |
國學院大学 梅川 智也 | 学識経験者 | 出席 |
株式会社ディスカバージャパン 高橋 俊宏 | メディア | 出席 |
熊本大学大学院 田中 智之 | 建築・空間デザイン | 出席 |
株式会社WAKU WAKUやまのうち 中尾 大介 | まちづくり・金融 | 出席 |
旅ジャーナリスト 野方 成子 | ジャーナリスト | 出席 |
株式会社ロフトワーク 林 千晶 | コミュニティデザイン | 欠席 |
星野リゾート 星野 佳路 | 観光業 | 欠席※ |
民事業者 | ||
長門湯本温泉まち株式会社 代表取締役 伊藤 就一 | 民間事業者 | 出席 |
長門湯本温泉まち株式会社 エリアマネージャー 木村 隼斗 | 民間事業者 | 出席 |
長門湯守株式会社 共同代表 大谷 和弘 | 民間事業者 | 出席 |
事務局 | ||
長門市長 江原 達也 | 出席 | |
経済観光部 堀 俊洋 | 出席 |
第4回目となる今回は、感染症対策を徹底した長門市役所の会議室にて、行政、民間事業者、外部評価委員の皆さんが集まって、重要な振り返りと未来に向けての議論が行われました。
審議・検討事項
(1)長門市による取組及び2022年度事業計画案について
①景観インフラ修繕計画の実施スキーム(案)
②景観インフラ修繕計画の見直しと実施の考え方
③計画外の事象に対する対応
・2022年度事業計画案について
(2)長門湯本温泉まち株式会社の取組状況及び2022年度事業計画骨子案について
開会
本日はお忙しい中、ご出席いただき誠に感謝している。コロナ禍が一時的に収束している状況であり、委員の皆さんと直接お話しできることを嬉しく思う。本日正午には長門湯本温泉街〜長門湯本温泉観光まちづくりプロジェクトが「日本土木学会デザイン賞 最優秀賞」を受賞したとの発表もあった。日頃より、さまざまなご助言をいただいている評価委員の皆様に感謝する。
長門湯本温泉はハード整備の完了から1年9ヶ月が経ったが、コロナ禍で苦しい時期が多々ありつつも、一つ一つみなさんのご意見を聞きながらイベント等を実施し、多くのお客様に来ていただいている状況である。ハード整備は完了しているものの、多くのお客様が来ることによって新しい課題も見えており、皆様のご意見を聞きながら、しっかりと公民連携でやっていきたい。また、本日は次年度の事業計画についても、専門的な見地からご審議をお願いする。
(1)長門市による取組及び2022年度事業計画案について
続いて、梅川智也評価委員会議長の進行のもと、長門市経済観光部より、2021年7月に発生した落雷による照明器具等の灯具の修繕の現状報告が行われ、「長門湯本温泉みらい振興基金」について長門市長門湯本温泉みらい振興基金条例に基づき
1-(1)基金の運用目的
1-(2)景観インフラ修繕計画における修繕積立の考え方
1-(3)基金の使途
についての前提条件が確認がされたのち
①景観インフラ修繕計画の実施スキーム(案)
②景観インフラ修繕計画の見直しと実施の考え方
③計画外の事象に対する対応
の3点について、評価委員会での審議・検討となりました。
資料作成 長門市
各委員の発言要旨は次のとおり
景観インフラ修繕計画について
■⻑⾨湯本温泉みらい振興基⾦について修繕計画の実施スキームについて
観光事業を携わるかぎり、⾃然災害における修繕は避けられない。⼤事な点は、⽇常点検を記録と、その情報を踏まえ対応や体制を整えることであり、今後に向けては上記に2点について⾒直していただきたい。また、当社にはCRMキッチンというお客様の滞在のご感想を頂戴する仕組みがあるが、今回の会議に先⽴ち確認すると、界⻑⾨にご宿泊のお客様からも指摘を受けており、現場でもそのようなお声が挙がっていることを確認している。宿泊のお客様だけではなく、夜間に利⽤する⽇帰りのお客様が増えたことも三保から聞いているので、満⾜度という観点からも早期な対応をお願いしたい。
■⻑⾨湯本温泉みらい振興基⾦について
⻑期的な取り組みであるため、基⾦運⽤のあるべき姿を慎重に議論してほしい。上記にあるような想定外の事象もそうだが、時には魅⼒的な投資も必要となる。⼤事な点は、ルールで縛り過ぎないことで、基⾦の中⻑期的な健全性と、迅速な対応をきっちり⾒極めて意思決定を⾏う必要がある。そのため、迅速に対応できるよう「基本的な考え⽅」と「意思決定の仕組み」を三者(エリアマネジメント法⼈、⾏政、評価委員会)で共有をしつつ、専⾨性を持つメンバーで専⾨委員会を構成し、投資の必要性や時々の集客⾒通し(⼊湯税の⼊込⾒通し)を開⽰し、意思決定する形を提案したい。
〜中尾委員 発言要旨〜
照明器具等の修繕に関して、台帳管理をし、設備面を管理精査しながら必要な対応していくことに異論はない。一方で、本来の基金の使途からすれば突発的な事象への事後対応だけでなく、長門湯本の取組を前向きに進化させていく投資についても合わせて検討してくべき。
〜田中委員 発言要旨〜
台帳管理自体には異存はない。資料で提案されている日常点検などの実施スキームを進めれば、大規模な修繕の金額を平準化することによって、10年毎の修繕費用を抑えられるのではないか。台帳と日常管理を前提とした景観インフラの修繕の目標イメージを作成し、全体で共有することが必要。また照明については、線状降水帯などの悪天候が繰り返す可能性を考慮して、避雷対策を併せて検討するべきではないか。
〜事務局 発言要旨〜
ご指摘の通りだと考える。今後台帳作成・管理を進め、修繕費用金額等をリアルタイムで可視化することで、協議ができるようにしたい。また避雷対策についても業者と検討を進めている。
メディアの観点から見ても、照明の修繕については早急に対応すべき。基金については、投資の部分もあれば、修繕の部分もあるだろうから、今後は評価委員会でも協議をしていきたい。
〜のかた委員 発言要旨〜
前述の落雷については、自分が取材で滞在する直前に発生し、竹林の階段の魅力的な撮影ができずに残念であった。現在も不具合があり修繕に時間がかかるとのことだが、この間にも多数のメディアや旅行会社が訪れているので、早めの対応を進めるべきだろう。特に竹林の階段の夜間景観は長門湯本温泉だけでなく長門市のシンボルとなっているので、今一度、景観の重要性を皆で再認識して改善に向けて進めていければと思う。
〜梅川委員長 発言要旨〜
それでは、①修繕計画の実施スキームについては、台帳を作成・管理した上で、しっかりと進めていただきたい。②景観インフラ修繕計画の見直しと実施の考え方については、宿泊客が想定通りに増加していく前提だが、そうならない場合もあるので、そこに配慮しながら対応していくことが留意点。③計画外の事象に対する対応について、各委員の意見を伺いたい。
〜中尾委員 発言要旨〜
突発的な事象に対する対応可能性については、現場・現状を把握している人間が起案することを前提に、委員会を開いて審議することが重要と考える。現場をしっかりと把握する仕組みを作りつつ、委員会が迅速に審議できる体制を作るべき。
〜田中委員 発言要旨〜
「景観インフラ」とは何かをしっかり考えることが大事。道路・照明以外の植栽、サイン、ストリートファニチャー等を時代と共に積極的に投資・更新していくことも重要。また、高い機動性でスピーディな対応のためには、委員長を含めた少人数での専門委員会を設置することが大事。
〜のかた委員 発言要旨〜
我々は、年2回の評価委員会開催時だけでなく、もっと積極的に状況を知りたいし、関わりたいと考えている。日常点検の様子をしっかりと発信してもらいつつ、スピーディな対応のための情報共有や臨時委員会の開催も大事。
〜梅川委員長 発言要旨〜
それでは、③計画外の事象に対する対応については、現場の状況がわかる人間及び専門家を含めた少人数の専門委員会を設置し、金額が少ない場合には委員長の専決事項として決定・対応。案件や金額に応じて、評価委員会の判断が必要な場合には、臨時の外部評価委員会を開催するスキームとしてはどうか。
〜田中委員 発言要旨〜
同意する。その際に、専門委員会のメンバーが流動的だと判断の一貫性も不明瞭となる懸念から、委員長を含めた一定のコアメンバーを含めるべき。
〜事務局 発言要旨〜
専門委員会を含めたご指摘のスキームは了承した。委員長の専決事項について、金額などはいかがか。
〜梅川委員長 発言要旨〜
一つの目安として100万円以下は委員長の専決とし、それ以上のものや計画自体を大きく方向転換する事象があれば臨時委員会を開催する形を提案する。もう一点、星野委員のご指摘にもあるが、入湯税を負担していただいているのはお客様であり、「受益と負担」の関係を考慮すれば「お客様に還元する」事業が必要である。インフラ整備だけでなく、「お客様に喜んでもらい、また来てもらうため」の事業をタイムリーに実施することが重要である。この点も、ぜひ専門委員会で議論し、適切に進めていくべきである。
足湯改修について
続いて、2022年度事業計画案について、長門市経済観光部より資料の説明があったのち、評価委員会にて審議が行われました。
〜のかた委員 発言要旨〜
個人的には、コロナ禍の状況において、温度管理にコストをかけてまで足湯が必要かはよく考えるべきだと思う。一方で、人気温泉地にはシンボルの周辺に足湯があることも多い。せっかく存在するものを活用することは大事だが、観光客目線でネガティブな要素が発生しない工夫は必要。
〜高橋委員 発言要旨〜
足湯については、無料の場所だからこそ、他の商材との組み合わせによる収益化を考えてはどうか。長門湯本の独自のスタイルを作り発信することが可能だと思う。
〜中尾委員 発言要旨〜
論点の一つに温度管理のコストがある。例えば、エネルギーコストが高い冬季は運用を中止し、それ以外の季節で足湯を活用する考え方もある。
〜田中委員 発言要旨〜
県に改修を要望した場合でも、お任せではなくエリアマネジメントの視点で「回遊性」や「収益化」のポテンシャルを持たせつつ、温度管理や景観性などを検討し、スペックを要望することが重要である。
〜事務局 発言要旨〜
長門湯本温泉の希少な源泉を使うことから、容積の減少や、デザイン会議で出されたグランドデザインもふくめ要望を提出している。県の判断が出るまで、今しばらくお待ちいただきたい。
〜木村エリアマネージャー 発言要旨〜
現状把握のために補足すると、そぞろ歩きの一部として河川公園の足湯に向かうお客様が多数いらっしゃるのは事実であり、一方で足湯が冷たいことがあるために「がっかり要素」になっている可能性もあることは心配している。まずは市役所でご提案いただいている燃料や温度、満足度などを測定することで、仮説を持って次の議論に進めればと考える。
〜星野委員 発言要旨(星野リゾート 界 長門 三保支配人より代読)〜
■⾜湯修繕について
コロナ禍の判断は、エリアマネジメント事業同様に⾏政において慎重にならざるを得ない。その中、前回の議論が着実に進んでいるが出来る限り早期な対応を期待したい。より重要な点は、運営体制の⾒直しであり⻑期的な視点で検討してもらいたい。⽇々の管理等を、将来にわたって⾏政が担い続けることは困難で、無理が⽣じるため、利活⽤を担う現地組織を巻き込んだ運営体制を検討してほしい。⻑期的な持続可能性を⾼めるためには負担を担うだけではなく、収益活動も含めた利活⽤と⽇々の管理をセットで検討し、現地組織でのマネジメントの⽅向性を模索する機会を提案したい。
観光プロモーションについて
〜高橋委員 発言要旨〜
インバウンドが来れないタイミングに事前に準備を行うことが大切。Discover Japan Travel_山口に掲載されたコンテンツは普遍的なものであり、土地の歴史や本質的なストーリーは、海外のターゲット層のニーズにマッチしており、多言語化を進めていく価値がある。
(2)長門湯本温泉まち株式会社の取組状況及び2022年度事業計画骨子案について
次に、長門湯本温泉まち株式会社の取り組み状況及び2022年度事業計画の骨子について、長門湯本温泉まち株式会社 木村エリアマネージャーより資料の説明、恩湯の取り組みについて長門湯守株式会社 大谷共同代表より説明があったのち、評価委員会にて審議が行われました。
資料作成 長門湯本温泉まち株式会社
各委員の発言要旨は次のとおり
まち株式会社として様々な課題が見えてきたこと自体が成果であり、それを基に年間の計画を立てながら進めている点を評価したい。恩湯においても、源泉の本質的な価値を見出し現代的に解釈し、冊子という形で伝える努力を評価する。
様々な取材や勉強を通じ、なぜ日本人が入浴習慣を大切にしてきたのか、それが与えるメンタルな影響などを知ることは重要な事だと感じる。その意味で、長門湯本温泉の特徴や仏教との結びつきをわかりやすく伝えている。一方で、地元の方むけに脱衣室や休憩室の使い勝手などの改善も考えてほしい。
〜中尾委員 発言要旨〜
まち会社が、長門湯本に次なる人材や事業を呼び込み、育てていくためのマインドや取り組みを持っていくことが大切。事業計画の項目や費用感については異論はない。
〜田中委員 発言要旨〜
事業計画の項目や内容については異論はない。対外的な情報発信はこのまま継続していけばと思う一方で、まち会社が重ねている様々な取り組みを地域に伝える「蓄積の見える化」が必要。また、国道316号の通過交通に対する情報発信も上手に伝える工夫をしてはどうか。ローカルへの発信の強化が必要だと感じる。
他、審議すべき事項について
〜星野委員 発言要旨(星野リゾート 界 長門 三保支配人より代読)〜
⼭⼝新聞の報道により、公衆トイレにおいて議論がなされていることを確認している。温泉街のあるべき姿に対して、地域に住む皆さんが議論を重ねていることは「温泉地ランキングTOP10」にむけて必要なことであり、お客様の満⾜度の⽬線で思慮されていることは、⻑⾨湯本温泉で観光業を経営する⽴場として感謝を申し上げたい。
今後も引き続き議論が深められることを期待しているが当社は、温泉街ではないが、過去に宿泊施設の再⽣を実施しております。その中でハード投資においてノウハウが蓄積しており検討の前提やステップとして、以下を提案したい。
–検討の前提–
・観光におけるトイレにおいて、もっとも重要な点は綺麗かどうかである。またトイレは集客の⽬的にはならないが、汚いトイレを放置することで、そぞろ歩きの魅⼒を削ぎ、再び観光地としてお選びいただくことが難しい。
・温泉街のフェーズを鑑みると、集客のための投資を検討すべきタイミングである。また、トイレの「数を増やす」ことは、維持管理負担を増やすことであり、慎重に議論すべき。
–検討のステップ–
① トイレの「数」は⼗分か否か
重要な点は、将来を⾒込んだ投資ではなく現時点の状況を把握し、客観的に「数」を精査すべきである。
② 不便で汚い状況の改善
現在のトイレの設置・利⽤状況を把握し、まず優先して考えるべき課題は、「不便」「汚い」「場所が分からない」などの貴重なご意⾒に対して、ソフト⾯で解決できる課題を検討すべきである。
繰り返しになるが、汚いトイレは存在⾃体が満⾜度低下を招くため、清潔感を改善するための改修・維持管理⽅法を検討すべき。
最後に これらの⽅法を出来る限り検討し、それでもどうしても既存トイレでは課題解決が不可能だという明確な合意が取れた場合は、新設の議論もあり得る。その条件として、既存トイレを無くす等、維持管理コストは維持または減らすことが⼤前提である。且つ、議論の経過は委員会にも共有いただき、委員会としても議論し、しっかりと⽅針策定に貢献していきたい。
今いただいた意見を、今後の検討会等で活かしていければと思う。
こちらについては、現在も検討会で継続して議論しているが、しっかり議論を重ねて合意できる終着点に向けて取り組んでいく事が重要。本日は基金の使い方も含め、様々な角度から色々な議論を進めることができた。今後は、この議論を長門湯本温泉の魅力作りに活かしていただければと思う。
閉会
みなさまの長時間におよぶ議論に感謝したい。委員の皆様から様々なご意見をいただき、新しい気付きもいくつかあったので、これからも湯本だけでなく他の観光エリアなどでも活かしていきたい。本日はどうもありがとうございました。
以上、約2時間半の活発な議論を経て、第4回目の「長門湯本温泉みらい振興評価委員会」は無事に終了しました。熱気のこもる会場で感じたことは、各評価委員の皆様が、長門湯本温泉の観光まちづくりのために、本気でコミットし続けようとする意気込みの強さ。各業界のエキスパートの皆さんの力をかりながら、長門湯本温泉は力強く進化を進めていきたいと思います。
長門湯本みらいプロジェクトでは、現在「まちづくりの情報発信」に関わる仲間を広く募集しています。リバーフェスタや社会実験などの情報発信から長門湯本の日々の魅力を伝えるレポートまで、「文章を書くのが好きな人」、「写真を撮るのが好きな人」、「デザインづくりが好きな人」など、我こそはと思う方は、是非お気軽にお問合せください。