長門湯本みらいプロジェクト

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長門湯本report:広報ながと連動企画・まちづくりのキーパーソン紹介 vol.02「 デザイン会議メンバー 首都大学東京教授 川原晋さん」

長門市では、市民に配布される広報誌「広報ながと」にて、「Join! 長門湯本観光まちづくり〜みんなの力で湯ノベーション〜」と題し、公民一体となった様々な長門湯本のまちづくりの現状と、それに携わる人々を紹介しています。
それに合わせ、長門湯本みらいプロジェクトでも、まちづくりのプロフェッショナルや、地域と文化を支えてきた地元の方々のインタビューを幅広く掲載し、みなさんに長門湯本の今を感じてもらいたいと思います。

まちづくりのキーパーソンをご紹介する第二弾は、首都大学東京教授、川原 晋さん。柔らかい笑顔で、周囲を和やかに包むような雰囲気を持つ川原さん。長門湯本の再生に向け「観光まちづくり」の分野から携わられています。そこから見えてくる長門湯本の魅力や、まちづくりの取り組み方などお聞きしてきました。

キーバーソン川原先生
湯本みらい
川原さんは、観光まちづくりというフィールドから長門湯本の再生に参画されています。そもそも「観光まちづくり」とは、どのような取り組みですか?
川原さん
私の場合、まず地域のためになるまちづくりにフォーカスします。そのために観光という手法を使い、その地域の目指す姿や課題を解決していきます。
湯本みらい
あくまで観光は手法なんですね!
川原さん
大事なのは、長門湯本の住民の方たちがより豊かな生活を送れることだと思っています。古くから続く萩焼の文化と技術、音信川や沈下橋など、それらの価値と資源を劣化させずに守る取り組みをしていきたいと思っています。
湯本みらい
観光地であっても住民の方や地域資源を第一に考える姿勢は、とても重要ですね。
川原さん
そうした姿勢を体現した「地域観光プランニングカレッジ」という取り組みも、この長門湯本にて行われました。私だけでなく他大学の先生方や学生を各地から招き、地元住民の方々にもご参加いただきました。

2017年9月に長門湯本温泉にて開催された「地域観光プランニングカレッジ」懇親会の模様。全国の大学から先生と生徒が集まり、街の未来を徹夜で考察!

湯本みらい
地元事業者の方々から「こんなに多くの若者がまちにいる光景は、久しぶりに見た気がするよ..!」そんな驚きと嬉しさが混じった反応が多く寄せられました。
川原さん
普段とは違ったつながりや視点の持ち主と交流を深めることで、長門湯本の再生を考える、新たなきっかけ作りになればと思っています。
湯本みらい
内外に開かれた場があることや、まちづくりを学んでいる学生が参加することで、今までになかった発想や取り組みなどが期待されますね。
川原さん
良い循環につながるのではと思います。外部のやり方だけが先行してしまうと単なるビジネスの場になりかねません。いかに地域と住民の生活を豊かにできるか、今までもこの点を大切にして活動してきました。

2017年8月に開催された大寧寺での「住民説明会」での川原さん。地域の方の声にできるだけ耳を傾ける姿勢が一貫しています。

湯本みらい
なるほど、それは川原さんの一貫した姿勢なんですね。そうしたスタイルを生み出す具体的なきっかけはありましたか。
川原さん
私が学生のとき、世間はちょうどバブル時代で。地域とは関係のない建物ばかりが目について違和感を感じていました。そんなとき、大学でまちづくりのプロジェクトに関わったのが始まりでした。
湯本みらい
どのような内容でしたか。
川原さん
住民主導でまちを守る、というテーマでした。そこでの活発な意見交換や模型を使ったワークショップを通じて、地元の方たちの声にこそヒントがあると気付かされ、私のまちづくりの出発点となりました。なので、今も変わらず私の軸足は「まちづくり屋」なんです。
デザイン会議:川原先生

毎月行われている長門湯本温泉観光まちづくり計画デザイン会議での様子。忙しい中、時には日帰りで東京から長門市に訪れ、様々な課題を議論する。

湯本みらい
初めて長門湯本を訪れたときの印象はどうでしたか?
川原さん
水辺のすぐそばを歩けることが非常に魅力的でした。水に触れて遊んだり、沈下橋を渡れることってあまりないですから。作陶家さんたちのいる三ノ瀬では、凛とした雰囲気がとても印象的でした。茶器に対する美意識が、集落の手入れや景観にも反映されていると感じたのを覚えています。
湯本みらい
長門湯本の再生計画についての印象はどうでしたか?
川原さん
そうですね~。他の温泉街でも見られる傾向ですが、まちの中にお店が少ないなという印象でしたので、早速課題を見つけたという感じでした。ただ、「cafe&pottery音」ができたことで地域内外から人が集まり、イベントも盛んに行われていますね。また、地元の萩焼作家さんの茶器を日常的に体感できる場が新設されたことも、地域にとって大きな資産になったと感じています。
湯本みらい
実際にまちづくりを進めるなかで、川原さん自身が様々なことを感じ取っているようですね。その中で印象に残っていることはなんですか?
川原さん
納涼盆踊りなど、地域のお祭りに活気があって非常に良かったです。そのパワーをまちづくりにも良い形で転用していけないかと考えています。また、住民の方たちと市の職員さんとの距離感が近く、双方が真摯に向き合っていると感じました。まちづくりを進めるうえで重要なことは、一人ひとりの想いを受け止めていくことだと思うんです。これからも互いに顔の見える良い関係性を築きながら、地域一体となって進めていける強みがあると感じています。

cafe&pottery音で行われた萩焼深川窯のワークショップでの一コマ。萩焼の文化にも興味深々とのことです。

湯本みらい
地域の人の役割や期待していることはなんですか?
川原さん
今や観光も形を変え、場の提供だけではお客さんに振り向いてもらえません。地域の人たちと様々な形での交流や、地域に根ざした生業の体験などが求められています。地域の方がプレーヤーとして活躍できる時代でもあるので、そういった形で主体的に参加してくれたら、まちづくりの仲間が増えるので非常に嬉しく思います。
湯本みらい
何より嬉しいことですね!仲間や同志が増えると、まちづくりの推進力も上向きになり良い相乗効果が生まれてくると思います。
川原さん
地域観光プランニングカレッジのように、各地から人を招き長門湯本を体感してもらうことで「長門ファン」増加にも貢献したいと思っています。これ、後からじんわり効いてくるんです!また、長い歴史を誇る大寧寺さんや住吉神社さんなど、この地域にとって非常に重要な役割を果たしている存在だと感じています。今まで構築されてきた地域との関係性などを学びながら、今後の長門湯本の観光まちづくりに取り入れたいですね。
プロフィール画像_川原先生

川原 晋さん

(首都大学東京 観光科学域 教授)

profile

都市計画コンサルタント、建築設計の実務を経て現職。「観光まちづくり」の研究と実践に取り組む。鶴岡市 山王商店街まちづくり(市民の活動舞台としてのみち広場づくり、運営)、高尾山 観光地マネジメント(まちパーキング事業)、エリアマネジメント南山(開発住宅地のコミュニティ形成✕現代の里山再生)、おおたオープンファクトリー(産業観光まちづくり)などに関わる。都市の祝祭空間研究、地域観光プランニング方法研究などを進めている。2017年度より長門湯本プロジェクトのデザイン会議メンバー。

首都大学東京 川原晋研究室 http://www.comp.tmu.ac.jp/ssm/index.html

※長門市の公式ホームページに移動します。