長門市では、市民に配布される広報誌「広報ながと」9月号より、「Join! 長門湯本観光まちづくり〜みんなの力で湯ノベーション〜」と題し、公民一体となった様々な長門湯本のまちづくりの現状と、それに携わる人々を紹介しています。
それに合わせ、長門湯本みらいプロジェクトでも、まちづくりのプロフェッショナルや、地域と文化を支えてきた地元の方々のインタビューを幅広く掲載し、みなさんに長門湯本の今を感じてもらいたいと思います。
まちづくりのキーパーソンをご紹介する第一弾は、有限会社ハートビートプラン代表、泉 英明さん。長身でがっしりした体格、飾らない笑顔が印象的な泉さん。8月に湯本温泉街にオープンし、新しい拠点になりつつある「cafe&potery音」にて、これまでのこと、これからのこと、お聞きしてきました。
湯本みらい
早速ですが、泉さんは、長門湯本温泉の再生に向けた取り組みを提案する「デザイン会議」の司令塔として着任されています。
泉さん
と言っても、僕のやり方は「ゲリラ活動」なんです。
湯本みらい
ゲリラ活動・・・?
泉さん
何か立派な提案書を書くよりも、行動で見せる。自ら動くことで、仲間を得て、地域の方々にも協力をいただけるような取り組みを生み出していこうと、活動しています。
湯本みらい
そのために、何度となく長門に足を運ばれているんですね!
泉さん
朝5時過ぎに起きて、6時の新幹線に乗って、新大阪から寝ながら来る。帰りは余裕をもって、と思うんですが、結局、最終の新幹線ギリギリまで話をしてしまいますね。
湯本みらい
もう住んだ方がいいですね(笑)
泉さん
住み込みというわけにはいかないんですが、どんどん長門に来られるように家を借りているんですよ。「ハートビート山荘」と呼んでいます。
湯本みらい
それはすごいですね。そんな泉さんのスタイルを生み出したこれまでの活動を少し教えていただけますか?
泉さん
大阪でも、長門湯本と同じく「水辺」に着目した「水都大阪」という取り組みをしてきました。ビルの「裏側」に追いやられていた川沿いの空間を、「北浜テラス」として水辺を楽しむ「表側」にし、色々な楽しみを生み出す場にしていく。そんなことが、現実にできてきているんです。
湯本みらい
本当に気持ちの良い水辺の空間が出来上がっていますよね。行政も巻き込んだ大きな動きになっていますが、立ち上げのころにはご苦労もあったのでは。
泉さん
最初は賛同してくれた人は本当に少しだけでした。でも、楽しみ方を共有していくことで一緒にやる人を増やしていく。みんながどうやったら楽しいか。少しずつ、こうなったら面白いという将来像を掲げて、実現し、実感していくことで、ご協力いただける人も出てきます。
湯本みらい
初めて長門湯本を訪れたときの印象はどうでしたか。
泉さん
あ~~どうしよう、という感じですね、正直言って。空き地も広がっているし、なかなか人も歩いていない。でも、音信川はすごく良いなと思いました。人工的でなく、きちんと自然護岸を残す形で整備された河川空間は、なかなかない魅力です。
湯本みらい
夏休みも音信川で目撃情報があったようですが・・
泉さん
家族で長門を堪能させていただきました。仕事で来るときは、ほとんど自由時間なく、観光らしいことは何もできていなかったのですが、長門の海と湯本の川を、息子2人と満喫しました。音信川には魚やカニもいて、本当に豊かな川だと興奮してしまいました。
湯本みらい
湯本温泉の再生に向けた計画についても、第一印象を教えてください。
泉さん
これも、あ~~どうしよう、ですね。主体が存在しないマスタープランですから。これをもしもすべて、市や県が公共事業でやっていったら、それこそ成功はないんじゃないかと、実際非常に焦りました。
湯本みらい
そこから今、実際に取り組みを進めてきてどう感じていますか。
泉さん
大きな強みを発見しています。若い人が元気なこと、そしてそれを応援できる上の世代の方がいらっしゃることです。
実は温泉街に、リスクを負ってでもまちを変えていこうというメンバーがいたんですね。そんな人が、マスタープランを引き金にして表に出てきた。普通はいわゆる「偉い人」が出てきて物事を決めていくわけですが、今回は違っていて、そうしたメンバーがすでに動き出していることが非常に大きいと感じています。
湯本みらい
デザイン会議が立ち上がって以降、かなりのスピードで、物事が動いているように見えます。
泉さん
「じゃらんじゃらん」や「温泉祭り」、「納涼祭」、「南条踊り」などを、地域で続けてこられたことが非常に効いています。何かを相談したい、というときに、顔の見える関係ですぐに検討ができる、実はこういう地域力がこれまで培われてきたことがこのスピード感を支えてくれていると思います。
湯本みらい
社会実験も進んでいますね。
泉さん
社会実験は、どんな街を目指すのかを実感しながら検証する場です。イベントに終わってはいけません。目指す将来像を共有し、課題も一緒に考えながら、地域の方の納得を得ながら進んでいく。それが、まちを変えていくための近道ですし、また、そうした取り組みで、関わった人が元気になるプロジェクトにしていきたいですね。
湯本みらい
地域の人の役割、地域の人に期待したいことはなんですか?
泉さん
誰かがやってくれる、ではなく、「自分ごと」と認識してまちづくりに参加してほしいです。恩湯・礼湯についても色々な議論を重ねてきましたが、みなさんが大切されているお風呂を、誰かがやればよい、行政がなんとかすべきだ、ではなく、自分たちで誇りをもって、本当に大切なものをどうしたら未来につないでいくことができるかを、主体的に考えて、あり方を決めていく必要があります。
また、未来志向であってほしいと思います。内外関係なく、チャレンジする人をぜひ応援してほしい。なかなかリスクを負ってチャレンジする人は出てきません。だからこそ、出てきたら全力で応援してほしい。
湯本みらい
今私たちが話をしている「音カフェ」も大きなチャレンジですね。
泉さん
これからの湯本を語るいい場所ができました。まちのみなさんにも、「新しい湯本」を暮らしの中に取り入れ、コーヒーを飲む時間、萩焼の魅力を存分に楽しんでほしいですね。
泉 英明さん
(有限会社ハートビートプラン代表取締役)
profile
都市計画プランニング、震災復興事業、中心市街地再生事業など10年の修行を経てハートビートプラン設立。高松、下関、豊田、大阪なんば、岡崎のまちなか再生や公共空間のプレイスメイキング、モノづくりのまち高井田住工共生まちづくり、着地型観光事業「OSAKA旅めがね」、水辺公共空間のリノベーション「北浜テラス」、水辺の新たな価値を創造する「水都大阪」などに関わる。2017年度より長門湯本プロジェクトのデザイン会議メンバー。
ハートビートプラン http://hbplan.jp/
※長門市の公式ホームページに移動します。