長門湯本みらいプロジェクト

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長門湯本report:広報ながと連動企画・まちづくりのキーパーソン紹介 vol.07「 デザイン会議メンバー 金光 弘志さん(有限会社カネミツヒロシセッケイシツ)」

長門市では、市民に配布される広報誌「広報ながと」にて、「Join! 長門湯本観光まちづくり〜みんなの力で湯ノベーション〜」と題し、公民一体となった様々な長門湯本のまちづくりの現状と、それに携わる人々を紹介しています。
それに合わせ、長門湯本みらいプロジェクトでも、まちづくりのプロフェッショナルや、地域と文化を支えてきた地元の方々のインタビューを幅広く掲載し、みなさんに長門湯本の今を感じてもらいたいと思います。

まちづくりのキーパーソンをご紹介する第七弾は、有限会社カネミツヒロシ セッケイシツの金光弘志さん。穏やかで落ち着いた雰囲気と、優しい笑顔が印象的な金光さん。そんな金光さんに、ランドスケープデザインの役割や、長門湯本温泉の印象などをじっくりお聞きしました。

長門湯本デザイン会議メンバー 金光弘志さん

お気に入りの音信川を背景に。月一回のデザイン会議出席だけで無く、現地の調査や打ち合わせで、長門市には頻繁に訪れるそうです。

湯本みらい
金光さんは、長門湯本温泉で「ランドスケープデザイン」の分野を担当されています。ランドスケープ・・・最近ではよくきかれるようになった言葉ですが、どんなことを言うのでしょうか?
金光さん
ランドスケープとは「人間をとりまく環境の眺め」です。景観とか風景と訳されます。環境とは「取り囲んでいる周りの世界」です。眺めは人が意識することで獲得することができます。ですから、人間の目の前にはっきりと存在しているものごとの眺めがランドスケープです。その眺めを直接的あるいは間接的な操作によって美的で文化的なものとするために行う創造的行為の総称がランドスケープデザインです。
湯本みらい
かなり広範囲な分野なんですね!
金光さん
そうなんです。建築・都市計画・土木など色々な分野を巻き込んでいます。日本では古来からの庭園文化がありますが、近代以降造園として引き継いでいる部分もあります。樹木や舗装やベンチといった外部空間要素のデザインだけではなく、建築や土木構造物そのものの見え方、それらと周辺の自然(山並み、田園など)との関係性なども計画していきます。さらには、人々が活き活きと生活するためにどのような仕掛けが必要かといったことも考えたりする分野です。
湯本みらい
どちらかと言うと、ハード面での整備をしていくことがランドスケープデザインなのかなと思っていましたが、温泉街に住んでいる人や遊びにきた人が楽しめるように、と取り組んでいることもランドスケープデザインになるということですね。
金光さん
それも眺めですからね。
長門湯本デザイン会議メンバー 金光弘志さん

毎月行われる長門湯本温泉街観光まちづくり計画デザイン会議での一コマ。様々な専門家が集まり、白熱の議論は、長時間に及びます。

湯本みらい
そうすると、金光さんの仕事はずいぶんと多岐に渡りますか?
金光さん
そうですね。でも多岐に渡るランドスケープデザインにおいて、ひとりで全ての事柄を専門的に扱うことはできません。ランドスケープの中でも分野は分かれていてそれぞれの専門性がありますから、プロジェクトの特徴に応じて色々な専門家の方に入っていただくことになります。私は全体計画、ハード要素のデザイン、植栽計画等が専門となります。
湯本みらい
長門湯本温泉の観光まちづくりでも「デザイン会議」では、熱い想いを持った様々な分野の専門家の方々が一同に会しますもんね!
金光さん
このプロジェクトのように、分野を越えて関係者が一同に集まる場があることは素晴らしいです。私の普段の仕事では、建築家や照明デザイナーやアートディレクター等、いわゆるデザイン分野の面々がコラボレーションして、コツコツと設計している、ということが多いですから。
長門湯本デザイン会議メンバー 金光弘志さん

2017年4月、長門湯本温泉観光まちづくり事業景観ガイドライン関係者をつれて、工事予定地を案内する金光さん。

湯本みらい
デザイン会議では、柵の高さを決めるだけでもみなさん随分と白熱していました。
金光さん
柵ひとつをとっても、それぞれの立場での意見がありますからね!市民の方々の意見はもちろん、デザインや安全性、予算など・・・色々な見方がありますから、私ひとりで決めるのではなく、それらのバランスを考えて決めています。
湯本みらい
金光さんには2016年1月から関わっていただいていますが、長門湯本温泉街の、最初の印象はどうでしたか?
金光さん
音信川の岩が露出した表情や遊歩道、路地や石積みで仕切られた段々状の土地、山に囲まれた谷状の地形が特徴的で、広すぎず狭すぎず適度に周囲に守られているような、いいスケール感の温泉街だと感じました。

時には、大きな模型を交えて、計画の説明を行う金光さん。街全体から、駐車場、竹林の階段など、それぞれに模型が制作されています。

湯本みらい
どんな風にデザインしていこうと思われましたか?
金光さん
デザインする、というと斬新で目新しいものをつくっていくこと、と受けとられがちですが、既に湯本にある良い景観要素を上手に生かして、雰囲気を残しながら、温泉街を歩く人の姿が主役になる背景や舞台装置のような施設がデザインできれば良いと考えています。何げなく人が佇みたくなる場所や、歩きたくなる場所、例えばちょっとした高さの段差があれば座りたくなるような仕掛けです。形や物が人に意味を与える、アフォーダンスの概念です。
湯本みらい
アフォーダンス??
金光さん
アフォードは与えるという意味で、アフォーダンスは造語です。心理学の概念なのですが・・・例えば、40cm程度の段差は人に座るという動作をアフォードしている、といったように環境が人に与える意味のことです。素敵な視点場があっても、いかにもここに座りなさいといったデザインのベンチではなく、湯本の風景に馴染んでいて何気なく腰掛けられるような要素があったり、路地の先におもてなしの飾りがみえてちょっと歩きたくなったりと、さりげなく人を佇ませたり、動かしたりするような、そんなことができるといいなと思うんです。

金光さんが担当しているランドスケープのイメージパースの一枚。様々な議論を経ながら、少しずつ完成に近づいています。

印象的な「竹林の階段」のイメージパース。来訪者のまち歩きは、ここからゆっくりと始まるんですね。

湯本みらい
それで、川辺へと降りていける階段の幅も広くとられているんですね?
金光さん
そのように捉えてもらえると嬉しいです。川辺へ向かう階段が広ければ無意識に降りてみたくなりますよね。観光地ですから、おいしいものを食べたり、照明に趣があったりするのは訪れた人たちにとってインプットされやすい要素ですが、意識していなかったけれど、街並みに情緒があった、なんとなくこの街が好きになった、という感想を持ってもらうことも重要だと思うんです。難しいことですけど、このやりすぎない感を意識させないデザインをしたい気持ちがあります。
湯本みらい
その“なんとなく”にもいろいろな仕掛けがあったんですね!
金光さん
専門家だけでなく、地域のみなさんも一緒になって、やりすぎた感を意識させない“なんとなく湯本好き”といったまちづくりができたらいいなと思っています。意外と暮らしていると当たり前になっている景観が良かったりするんです。
湯本みらい
暮らしていると、気付かなかったり、忘れてしまったり、しますよね。
金光さん
色々なところで仕事をさせてもらうと、大体地元の人はこんな田舎で何もないところっていうんですけど、逆に私からすると新鮮で素敵な場所や要素がたくさんあります。そうした皆さんが発見というか意識できていないものを、外から来た人から刺激を与えて、地元の方が上手に評価して活かしていくことができればいいなと思います。これは司令塔の泉さんや他のデザインチームメンバーが積極的に活動してくれているので、皆さんだんだん街に対する意識とか、街を変えようっていう意識が盛り上がってきているのを感じます。

金光さんのランドスケープデザインが、いち早く形になった上流側の「雁木広場」と「飛び石」。

長門湯本の魅力の一つ、水辺を楽しむ仕掛けに、休日には家族連れが楽しむの姿が見られます。

湯本みらい
そうですね!長門湯本温泉のランドスケープデザイン、ポイントはどこでしょうか。
金光さん
デザインの軸になっているのは国道沿いに設けられた駐車場から、音信川へと下っていく竹林の階段から竹林の路を経て雁木広場へと至る軸線です。初めて来た人に湯本の街を印象づけられる最初の場所になるので、とても重要です。この軸線から自然な流れで、音信川や恩湯やお店へと来訪者を誘導できればいいなと思います。
湯本みらい
川でいうと、社会実験という形ではありますが、川床の設置も実現したりと、構想は一歩ずつ実現しているように見えます。
金光さん
色々な方々の協力があって、マスタープランで描かせてもらった理想像が実現しているのは本当にすごいことです。
長門湯本デザイン会議メンバー 金光弘志さん

長門湯本の住民の方々に、整備計画を説明する金光さん。変化に伴う地域の方々の不安を、少しでも減らすための機会を重ねています。

湯本みらい
一方で、温泉街にお店が増えていくかどうか、という課題はありますよね。
金光さん
そうですね。ハード整備が完了しても、言ってみれば舞台の床を作っているみたいなものですから、床だけでは居心地は良くならないですよね。お店の中で佇む、何か飲める、食べられる、お土産を見て回る、ということができないと、滞在時間はなかなか増えないです。温泉街でどう過ごすか、という提案はやはりハードだけではできないので、事業者や地元の方々の取り組みに期待しています。
湯本みらい
地域の皆さんに期待することはありますか?
金光さん
観光地に行くと、植木鉢1つ置いてあったり、一輪の花や竹細工が玄関先に飾ってあるとか、そういったものを見るだけでも素敵だなと思うんです。仕事柄色々なところに仕事でもプライベートでも行きますが、本当に小さな街なんだけど、ちょっとしたおもてなしの心を感じると、なんだかホッとします。
湯本みらい
ホッとできる街、素敵ですね。
金光さん
小さなことでも、皆さんでやっていこうという意識が出てくるといいですね。 簡単なことではないと思うので、少しずつ、それが1年2年3年って積み重なってくると、10年後20年後にはもっと素敵になると思うんです。また、長門湯本には、例えば、先人が石を積み上げて土地をつくり守ってきた残っていますから、うまく継承していくべきだと感じています。
長門湯本デザイン会議メンバー 金光弘志さん

進行中の工事現場で見つけたヘルメット姿の金光さん(中央左)。今後、様々な場所で姿をお見かけするかもしれませんね。

湯本みらい
石と言えば、先日も金光さんが現場で石合わせをしている姿を見て、衝撃を受けました。デザイナーさんが現場にいる、ということに。
金光さん
いやいや現場が一番大事なんですよ。設計時に様々な検討をして図面に表現しますが、図面だけでは把握できなかったり職人さんに伝えられないことが色々とあります。現場段階になって分かってくることや、施設ができはじめて分かってくること、現場で土を掘ってみて分かることとか。最終的には現場で物事を決めることが、デザインのクオリティーを保つために一番重要なんです。
湯本みらい
不測の事態っていうのもあるんですね。
金光さん
そうそう。だから本当はヘルメットをかぶって長靴はいて毎日現場を見ていたい。
長門湯本デザイン会議メンバー 金光弘志さん
湯本みらい
金光さん、これからもっと湯本に来る機会が多くなるんですか?湯本の現場に行ったら金光さんに会える。
金光さん
常駐はできませんがなるべく現場に来ることを考えています。これからが勝負です。デザインって全体系のことも重要ですが、ディテール(細部)をいかに綺麗に仕上げるかということもポイントなんです。部材の細かな納まり、舗装の目地、今まさに植え付けしている木の角度や向きも重要です。「この枝の向きを変えたいので45度くらい回して!」とか現場で口を出すので、親方や職人さんには嫌がられます(笑)でもそこは譲れません!
長門湯本デザイン会議メンバー 金光弘志さん

金光弘志さん

(有限会社カネミツヒロシセッケイシツ)

profile

1968年広島市出身

日本大学理工学部交通土木工学科卒業後、都市設計事務所、ランドスケープデザイン事務所勤務を経てカネミツヒロシセッケイシツ設立。
日本大学理工学部非常勤講師。

様々なビルディングタイプの公共及び民間建築の外部空間デザインを手がけている。
2016年星野リゾートのもとで「長門湯本温泉マスタープラン」のランドスケープデザインを担当。
2017年度より長門湯本プロジェクトのデザイン会議メンバー。

カネミツヒロシセッケイシツ http://www.khdo2004.com/

※長門市の公式ホームページに移動します。