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長門湯本report:「JIA中国支部建築家大会IN長門2017」にてデザイン会議のメンバーがパネルディスカッション!

「JIA中国支部建築家大会 IN 長門 2017」が11月17日(金)ルネッサ長門にて開催されました。県内外から幅広い年代の建築家や長門湯本の住民の方、まちづくりに携わっている方など総勢70名ほど集まり、開会前から参加者同士の交流が盛んに行われていました。こちらの記事では、写真を織り交ぜて、当日の模様をご紹介いたします。

「領域を越えた建築活動~地域力を活かしたまちづくり」

プログラムは、三井所清典さん(株式会社アルセッド建築研究所 代表取締役, ⽇本建築⼠会連合会会⻑)の基調講演「領域を超えた建築活動~地域力を活かしたまちづくり」からスタートしました。 「まちづくりは私の原点」という三井所代表の建築家としての歩みは、佐賀県有田町で始まり、有田焼に負けない街づくりを目指し公共建築物から民間住宅、修景や有田町HOPE計画など、多彩な活動を行ってこられました。

また、中越地震の被災地である新潟県山古志村では、地元の大工さんと建築家が互いに協力関係を結び、復興住宅を作り上げたそうです。この事業をきっかけに、三井所代表は「生業の生態系の保全」を提唱されています。1つの地域社会の中で、大工さんや建具屋さん、製材所や工務店など様々な生業を持つ人々が建築物を作るために関わり合いながら暮らしています。自然の生態系と同じように、それぞれの地域で生業の多様性を守ること、再構築することの必要性を説いておられました。

40年も前から佐賀県有田町で、地域の良さを引き出すまちづくりをされてきた三井所代表。各地域ごとにあるアイデンティティーを丁寧に読み取り、これからの建築やまちづくりの中で反映させてほしいという願いは、長門湯本温泉のまちづくりにも大きく共通するものだと感じます。

⻑⾨湯本温泉のまちづくりの概要

次のプログラムでは「長門市のまちづくり」について、長門湯本観光まちづくり計画に関わる計4名によるプレゼンが行われました。
まず長門湯本まちづくりの概要を説明されるのは、長門市成長戦略推進課部長の木村隼斗さん。全国人気温泉地トップ10入りを目指し、魅力ある温泉街を形成すべく、6つの要素をベースにまちづくりを進めています。

外湯施設・食べ歩き・文化体験・そぞろ歩き・画になる場づくり・休み、佇む空間づくり これら地域の魅力を磨き上げ、再編集するという作業を、地域住民の方たちと専門家と一緒に取り組んでいる現状を丁寧に説明されました。

⻑⾨湯本温泉のまちづくりの取り組み

続いて、長門湯本観光まちづくり計画デザイン会議の司令塔・泉英明さん(有限会社ハートビートプラン)から、現在進行形の長門湯本のまちづくりについて説明がありました。 「信頼出来る民間事業者と共に、高いクオリティのものを少しずつ作り上げ、確実に収益を生み出していくこと」の重要性を強調されていました。

先に行われた「おとずれリバーフェスタ」では、公共空間の使いこなし・外湯再生・地域事業活性化・新規事業受け入れ、という4つの柱を目標とし、新たな価値の創造がなされる社会実験が行われた事を、豊富なデータ交えて説明。また現在では、株式会社YMFG ZONEプラニングが企画・運営する「長門湯本温泉事業者オーディション」が進行中で、新規事業者との取り組みも動き出している点も注目されました。

⻑⾨湯本温泉の灯りまちづくり

次に壇上に登った、デザイン会議メンバーで照明デザイナーの長町志穂さん(LEM空間工房)からは、まちづくりにおける照明の重要性が説明されました。京都や神戸などの国際都市でも数多くの実績を持つ長町さんは、豊富な写真を元に、照明が引き出す街の魅力を紹介。
色温度の重要性、カラーライティングによる回遊性の促進、湯本提灯による地元のコミットメントなど、長門湯本でもその効果を体感された方が多かったように思います。

ガイドライン・リノベーション

そして、地元長門市からは、山根雄高さん(山根建築設計事務所)が壇上へ。数年前に長門市に戻り、今後の活躍が期待される若手建築家の山根さんは、アルセッド建築研究所のメンバーとともに、長門湯本地域での「住民ワークショップ」や「設計者・施工者ワークショップ」を繰り返してきました。会場では、その積み重ねを通じて、全体として一体感のある景観を生み出すために、「長門湯本まちづくりの景観ガイドライン」が、現在策定中であることも報告されました。

また、今夏オープンしたばかりの「cafe&pottery音」を例に、リノベーションの重要性についても言及がありました。「cafe&pottery音」では
・旅館経営者・陶芸家・デザイナーなど地元で活動する異業種の力が集まっている点。
・空き家をリノベーションした店舗で、「萩焼、川沿い」など地域の持つ魅力をコンセプトにしている点。
などから、長門湯本のまちづくりにおいて先駆的事例であると紹介されていました。

パネルディスカッション

4名それぞれが発表を終え、最後のプログラムであるパネルディスカッションが開始されました。コーディネーターは首都大学東京の川原普教授。「観光まちづくりにおける空間づくりの専門家の活躍の姿」というテーマのもと、三井所さん、泉さん、長町さん、山根さんの4名がパネラーとして活発な議論が展開しました。

〜川原教授の発言要旨〜

「長門湯本まちづくりのハードデザインの一員として、観光まちづくりの視点から参加させていただいています。 観光分野だけに特化しても、劇的に地域全体が良くなるわけではないと思っています。これまで地道に環境を作り上げてきた建築•都市計画•まちづくり分野と、ビジネスとしての観光事業がうまく組み合わせることで地域が活性化していくと考えています。」

〜泉さんの発言要旨〜

「新たにエリアに入るとき、地元の方々とどういった関係性を結んでいくかを考えながら接していきます。そうした中で事業を起こしたい方やお店を構えたい方が最初に相談を持ちかけるのは、デザインや工事の出来る、建築家や工務店です。そこにおもろい人や情報などが集約されるため、彼らは人をつなぐハブ機能を持っているキーパーソンです。」

〜山根さんの発言要旨〜

「この半年間で建築家と施工者が同じ目的を共有し恊働するというワークショップが行われました。その結果、建築家や施工者、製材所などが1つのチームとなり事業者のための受け皿になろう、と結束できたことが最大の成果だと感じています。 また、これから地元建築家が担う役割の一部に、事業者と施工者などをつなげるコーディネーターとして職域を拡張していくことも重要になって来るのではないかと感じました。」

〜長町さんの発言要旨〜

「熱い想いこそが物事を回していく原動力だと思うので、地元でそういった想いをお持ちの方からお話を聴くようにしています。住民の方に限らず、行政の方や職種の近い方とその想いやアイディアを共有したりと、様々な場面で大いに助けられています。」 「これまでの仕事を通じて思うことは、建築家が設計や調整役に回る仕事をボランタリーにしている現状から脱却していかなければと考えています。建物を作ったり改修が必要とされている場合において、プロである建築家を、必ず入れるという流れを作る必要があると考えています。」

〜三井所さんの発言要旨〜

「今の長門湯本は、幸せだなと感じています。各専門家が力を結集していることから、プロセスも含めて観光まちづくりのモデルケースが出来上がりつつあり、いずれ ”長門湯本モデル” が中国地域、そして全国に広まるように願っています。」

以上、およそ3時間半に及ぶ講演とディスカッションでしたが、豊富な資料と講演者の方々の分かりやすい説明で、非常に聞き応えのある内容でした。中でも、印象に残ったのは、三井所代表の「今の長門湯本は本当に幸せ」という一言。長年のご経験と幅広い知見から発せられた、言葉の重みをしっかりと受け止めて、各専門家、行政、地域が力を合わせて、長門湯本のまちづくりを進めていきたいと強く実感しました。